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民法判例 2

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所有権の移転時期
所有権の移転時期(不特定物)
集合動産の譲渡担保(集合動産を譲渡担保の目的とすることができるか?)
一筆の土地の一部(一筆の土地の一部を売買の目的とすることができるか?)

解除と登記
取得時効と登記

権利外観法理(民法九四条二項を類推適用すべきものとされた事例)

カフェー丸玉女給事件(自然債務) 
出世払債務
懲罰的損害賠償




物権変動

 所有権の移転時期

◆昭和33年06月20日 最高裁判所第二小法廷判決 昭和31(オ)1084 不動産所有権移転登記手続等請求 民集第12巻10号1585頁

【判示事項】
特定物の売買と所有権移転の時期。

【裁判要旨】
売主の所有に属する特定物を目的とする売買においては、特にその所有権の移転が将来なされるべき約旨に出たものでないかぎり、買主に対し直ちに所有権移転の効力を生ずるものと解するを相当とする。(大審院大正二年一〇月二五日言渡判決、民録八五七頁参照)。

【参照法条】
民法176条


【解説】
売買などの契約において、物の所有権がいつ売主から買主に移転するかについて、物権変動について意思主義をとるわが国では、原則として契約成立時に所有権が移転するものとされる。
これの例外としては次の通り。
(1)「他人物売買」 売主が他人から目的物の所有権を取得した時(最判昭和40年11月19日・民集19巻8号2003頁)
(2)「不特定物」  目的物が特定したとき(最判昭和35年6月24日・民集14巻8号1528頁)


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 所有権の移転時期(不特定物)

◆昭和35年06月24日 最高裁判所第二小法廷判決 昭和31(オ)252 損害賠償請求 民集第14巻8号1528頁

【判示事項】
不特定物の売買における目的物所有権移転時期。

【裁判要旨】
不特定物の売買においては、特段の事情のないかぎり、目的物が特定した時に買主に所有権が移転するものと解すべきである。

【参照法条】
民法176条,民法401条2項

不特定物の売買においては原則として目的物が特定した時(民法四〇一条二項参照)に所有権は当然に買主に移転するものと解すべきであるら、右判決が「不特定物の売買においては、特に売主にその所有権を留保するという特約が存しない以上特定の時をもつて所有権が買主に移転するものと見るべきである」旨判示したのは正当であ(る)。


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 集合動産の譲渡担保(集合動産を譲渡担保の目的とすることができるか?)

◆ S54.02.15 第一小法廷・判決 昭和53(オ)925 物件引渡(民集第33巻1号51頁)
【要旨】
構成部分の変動する集合動産であつても、その種類所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうる。
【参照・法条】
  民法85条,民法369条


【集合物・集合動産】
一個の物件の目的は、独立した一個の物でなければならない(一物一権主義)。しかし、これを徹底すると、たとえば倉庫の中に存在する100ダースのビール瓶などを取引の対象とするような場合不都合が生じる。そこで、個々独立の物が集合してひとつの経済的機能を持つような場合、これらを「集合物」として、これらを一括して譲渡担保の目的とするという方法が利用されてきた。

【譲渡担保】
担保に供しようとする物の所有権をいったん債権者に移し、一定の期間内に債務者が弁済をすれば、再び所有権を債務者に復帰するという担保制度。民法に規定はないが、商取引上の必要性から判例において認められるにいたっている。



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 一筆の土地の一部(一筆の土地の一部を売買の目的とすることができるか?)

◆ S30.06.24 第二小法廷・判決 昭和28(オ)847 土地所有権移転登記手続請求(民集第9巻7号919頁)
【要旨】
一筆の土地の一部といえども、売買の目的とすることをうべく、その部分が具体的に特定しているかぎりは、右部分につき分筆手続未了前においても、買主はその部分につき所有権を取得することができる。

参照・法条:
  民訴185条,民法176条,民法177条,民法206条,不動産登記法79条,不動産登記法46条ノ2

 一筆の土地といえども、これを区分して、その「土地の一部」を売買の目的とすることはできる。そして右「土地の一部」が、売買の当事者間において、具体的に特定しているかぎりは、分筆手続未了前においても、買主は、右売買に因りその「土地の一部」につき所有権を取得することができるのである。


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 解除と登記

◆昭和35年11月29日 最高裁判所第三小法廷判決 昭和33(オ)846 登記抹消請求 民集第14巻13号2869頁

【判示事項】
予告登記の存在と民法第一七七条。

【裁判要旨】
不動産売買契約が解除され、その所有権が売主に復帰した場合、売主はその旨の登記を経由しなければ、たまたま右不動産に予告登記がなされていても、契約解除後に買主から不動産を取得した第三者に対し所有権の取得を対抗できない。

【参照法条】
民法177条,民法545条,不動産登記法3条,不動産登記法34条


不動産を目的とする売買契約に基き買主のため所有権移転登記があつた後、右売買契約が解除せられ、不動産の所有権が買主(原文ママ)に復帰した場合でも、売主は、その所有権取得の登記を了しなければ、右契約解除後において買主から不動産を取得した第三者に対し、所有権の復帰を以つて対抗し得ないのであつて、その場合、第三者が善意であると否と、右不動産につき予告登記がなされて居たと否とに拘らないことは、大審院屡次判例の趣旨とする所である。


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 取得時効と登記

◆昭和33年08月28日 最高裁判所第一小法廷判決 昭和30(オ)15 土地明渡請求 民集第12巻12号1936頁

【判示事項】
不動産所有権の時効取得と対抗要件。

【裁判要旨】
時効により不動産の所有権を取得しても、その登記がないときは、時効完成後旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対し、その善意であると否とを問わず、所有権の取得を対抗できない。

【参照法条】
民法177条

取得時効による不動産の所有権の取得についても、登記なくしては、時効完成後当該不動産につき旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対して、その善意たると否とを問わず、時効による所有権の取得を対抗し得ないと解するを相当とするから、所論は採るを得ない(大正一四年七月八日大審院判決、民集四巻四一二頁参照)。


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 権利外観法理(民法九四条二項を類推適用すべきものとされた事例)

◆判例 S45.09.22 第三小法廷・判決 昭和43(オ)91 占有妨害排除家屋明渡等請求(民集第24巻10号1424頁)

【判示事項】
  不実の所有権移転登記が所有者の承認のもとに存続せしめられていたものとして民法九四条二項を類推適用すべきものとされた事例

【要旨】
  不動産の所有者甲が、その不知の間に甲から乙に対する不実の所有権移転登記の経由されたことを知りながら、経費の都合や、のちに乙と結婚して同居するようになつた関係から、抹消登記手続を四年余にわたつて見送り、その間に甲において他から金融を受けた際にもその債務を担保するため乙所有名義のまま右不動産に対する根抵当権設定登記が経由されたような事情がある場合には、民法九四条二項を類推適用し、甲は、不動産の所有権が乙に移転していないことをもつて、その後にこれを乙から買受けた善意の第三者丙に対抗することができないものと解すべきである。
【参照・法条】
  民法94条2項


不動産の所有者が、真実その所有権を移転する意思がないのに、他人と通謀してその者に対する虚構の所有権移転登記を経由したときは、右所有者は、民法九四条二項により、登記名義人に右不動産の所有権を移転していないことをもつて善意の第三者に対抗することをえないが、実の所有権移転登記の経由が所有者の不知の間に他人の専断によつてされた場合でも、所有者が右不実の登記のされていることを知りながら、これを存続せしめることを明示または黙示に承認していたときは、右九四条二項を類推適用し、所有者は、前記の場合と同じく、その後当該不動産について法律上利害関係を有するに至つた善意の第三者に対して、登記名義人が所有権を取得していないことをもつて対抗することをえないものと解するのが相当である。けだし、不実の登記が真実の所有者の承認のもとに存続せしめられている以上、右承認が登記経由の事前に与えられたか事後に与えられたかによつて、登記による所有権帰属の外形に信頼した第三者の保護に差等を設けるべき理由はないからである。

【権利外観法理】
真の権利者が自分以外の者が権利者であるかのような外観を作り出したときは(本件事例で言えば、甲は、不実の乙名義の不動産登記がなされていることを知りながら長年にわたってそれを放置したままにしていた)、権利者が権利を失うことになったとしても、それを信頼した第3者は保護されるべきである、とするものである。表見法理ともいわれる。


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 カフェー丸玉女給事件(自然債務)

◆大判 S10.04.25 新聞3835号5頁
斯る事情の下(客が女給の歓心を買うために、一時の興に乗じて独立資金を与える旨の契約をした)に於ける諾約は、諾約者が自ら進て之を履行するときは債務の弁済を失わざるも、要約者に於いて之が履行を強要することを得ざる特殊の債務関係を生ずる。

【解説】
債権の効力として、(1)相手方に給付を請求できる請求力、または、訴えを求めることができる訴求力。(2)債権者が債務者から受け取った給付を保持し、返還しなくてよいという給付保持力、などがある。これらの効力のうち、債務者が任意に履行すれば、その給付を受け取って保持することはできるが(いったん受け取ったものを返す必要はないということ)、裁判に訴えて相手方に請求することができない債権、つまり、給付保持力しかない債権を「自然債務」という。


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 出世払債務

◆大判 T4.03.24 民録21・439
債務者が出世したときに返済する旨の約定は、不確定期限を付したものであって、停止条件付債務ではない。

【解説】
条件と期限の区別において問題となる例として「出世払債務」があげられる。
AがBに金を貸し与え「返済は出世したときでいい」としたところ、Bは放蕩に身をもちくずして立身出世の見込みは皆無となった。AがBに返済を求めたところ、Bは、まだ出世していないのだから弁済期は来ていないと抗弁したがみとめられるかという問題である。
出世を条件と解すれば(出世するかどうかはまったくわからないことで、弁済期を、到来するかどうか不確実な事実にかからせていることになる)、
出世しない限り弁済期は到来せず(Bの抗弁)、仮に出世がまったく絶望となった場合にも永久に弁済期は到来しないことになる。
一方、不確定期限と解した場合には、弁済を出世まで猶予するというものとなり、出世できないことが確定したら弁済期が到来することになる。もっとも、現実には、いつ出世が不可能と確定したかを判断することは難しい。
どちらが妥当かは、「当事者の意思が出世しなければ支払う必要なしというのであれば条件であり、結局支払うのだが出世まで猶予するというのであれば期限だということになる。それぞれの場合に当たって解決するほかはない。」(我妻・有泉「民法1 総則・物権法」 199頁)

とはいえ、出世してないやつが返済できるかというと無理だろうから、相手を見る目がなかったAは潔くあきらめるべきであろう(笑)


AがBに対する貸金返還請求の訴えを起こしたところ、「Bはいう。自分はもう、10年以上前に出世した。税金は、これこれの額を支払っていたし、これこれの金をかけて家屋の大修繕もした。だから、弁済期は10年以上前に到来し、Aは、その時から請求することができたのにしなかったのだから、それから10年で消滅時効にかかって、今日では債務はない。裁判所は、Bの言い分を認めて、訴えを棄却した。」(我妻「民法案内 2 民法総則」301頁)

これまた、Aは、こんな恩義を知らないような輩にお金を貸したおのが不明を恥じて、潔くあきらめるべきであろう。


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 懲罰的損害賠償

◆裁判年月日:平成9年07月11日
◆最高裁判所第二小法廷・判決
◆民集第51巻6号2573頁

【判示事項】
いわゆる懲罰的損害賠償を命じた外国裁判所の判決について執行判決をすることの可否
【裁判要旨】
外国裁判所の判決のうち、補償的損害賠償等に加えて、見せしめと制裁のために懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分については、執行判決をすることができない。


カリフォルニア州民法典の定める懲罰的損害賠償(以下、単に「懲罰的損害賠償」という。)の制度は、悪性の強い行為をした加害者に対し、実際に生じた損害の賠償に加えて、さらに賠償金の支払を命ずることにより、加害者に制裁を加え、かつ、将来における同様の行為を抑止しようとするものであることが明らかであって、その目的からすると、むしろ我が国における罰金等の刑罰とほぼ同様の意義を有するものということができる。これに対し、我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補てんして、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり(最高裁昭和六三年(オ)第一七四九号平成五年三月二四日大法廷判決・民集四七巻四号三〇三九頁参照)、加害者に対する制裁や、将来における同様の行為の抑止、すなわち一般予防を目的とするものではない
・・・そうしてみると、不法行為の当事者間において、被害者が加害者から、実際に生じた損害の賠償に加えて、制裁及び一般予防を目的とする賠償金の支払を受け得るとすることは、右に見た我が国における不法行為に基づく損害賠償制度の基本原則ないし基本理念と相いれないものであると認められる
したがって、本件外国判決のうち、補償的損害賠償及び訴訟費用に加えて、見せしめと制裁のために被上告会社に対し懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分は、我が国の公の秩序に反するから、その効力を有しないものとしなければならない。



【懲罰的損害賠償】
加害者の不法行為が悪質で強い非難に値すると認められる場合に、制裁を加えることで将来の同じような行為を抑止するために、実際に生じた損害賠償に上乗せして支払うことを命じる賠償のことをいう。英米法系諸国で認められているが、日本では認められていない。


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