トップページ   ■判例データベース・トップ


行政法判例1

行政法判例2   行政法判例3   行政法判例4


行政上の法律関係(公法と私法)
自作農創設特別措置法による農地買収処分と民法第一七七条
国税滞納処分による差押と民法第一七七条
都営住宅明渡し事件(公営住宅の使用関係)
建築基準法65条と民法234条
公営住宅使用権の相続
食肉販売の営業許可を受けない者のした食肉買入契約の効力
独占禁止法違反の契約の効力


行政行為
国税賦課処分無効請求(行政処分の瑕疵が明白であるということの意義)
耕作権確認並耕地引渡請求(訴願裁決を裁決庁が自ら取り消した違法と取消処分の効力)

村長解職投票無効確認事件(事実上の公務員の理論)

瑕疵の治癒
違法性の承継

神戸税関懲戒処分事件
国旗国歌不起立訴訟


行政立法
覚せい剤取締法違反被告事件(公布の時期)
サーベル事件(銃砲刀剣類登録規則の法適合性)
監獄法事件
パチンコ球遊器事件(通達による課税処分の解釈変更)
通達の法的性質




行政上の法律関係(公法と私法)

 自作農創設特別措置法による農地買収処分と民法第一七七条

◆判例 S28.02.18 大法廷・判決 昭和25(オ)416 行政行為取消請求(民集第7巻2号157頁)

判示事項:
  自作農創設特別措置法による農地買収処分と民法第一七七条。

【要旨】
  自作農創設特別措置法による農地買収処分については、民法第一七七条は適用がない

【参照・法条】
  自作農創設特別措置法3条1項,民法177条



自作農創設特別措置法(以下自作法と略称する)・・・に基く農地買収処分は、国家が権力的手段を以て農地の強制買上を行うものであつて、対等の関係にある私人相互の経済取引を本旨とする民法上の売買とは、その本質を異にするものである。従つて、かかる私経済上の取引の安全を保障するために設けられた民法一七七条の規定は、自作法による農地買収処分には、その適用を見ないものと解すべきである。されば、政府が同法に従つて、農地の買収を行うには、単に登記簿の記載に依拠して、登記簿上の農地の所有者を相手方として買収処分を行うべきものではなく、真実の農地の所有者から、これを買収すべきものであると解する。


【解説】
行政上の法律関係は、公法関係と私法関係に区別されることがあるが、これは、私法関係が「対等の立場にあるものの間の法律関係」であるのに対して、公法関係は優越的地位である行政主体とそれに服する国民との間の法律関係としてとらえることができるからである。ここで、公法関係に対する私法の適用ができるのかということが問題となるが、「かつては、公法関係とくに権力関係には私法が適用されることを否定する考え方も強かったが、近年は、法関係の実質に応じて適用法規が判断されるようになっている。」(芝池「判例行政法入門・第3版」2頁)

本判決においては、農地買収処分は、対等の関係にある私人相互の経済取引を本旨とする民法上の売買とは本質が異なり、国家が権力的手段をもって農地を強制的に買い上げるものであるので、私経済上の取引の安全を保障するために設けられた民法一七七条の適用はないとした。


しかし、一方で、国税滞納処分による差押さえにについては民法177条の適用があるとした判例がある(最判昭和31年4月24日民集第10巻4号417頁)
また、自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分によって買収した土地の所有権については「国は、登記なくして第三者に対抗することはできない」(最判昭和41年12月23日民集第20巻10号2186頁)。

その他、国家賠償法に基づく国に対する損害賠償請求権の消滅時効について、私人相互間における損害賠償の関係とその目的性質を異にするものでないから、会計法30条の5年と解すべきでなく、民法167条1項により10年と解すべきであるとした判例がある(最判昭和50年2月25日民集第29巻2号143頁)


▲ 上へ戻る

 国税滞納処分による差押と民法第一七七条

◆判例 S31.04.24 第三小法廷・判決 昭和29(オ)79 公売処分無効確認等請求(民集第10巻4号417頁)

【判示事項】
一 国税滞納処分による差押と民法第一七七条。

二 国税滞納処分による不動産差し押えの場合における国の登記欠缺の主張が正当の利益がないとはいえないとされた一事例。

【要旨】
一 国税滞納処分による差押については、民法第一七七条の適用があるものと解すべきである。

二 国が国税滞納者に対する滞納処分として登記簿上滞納者名義の不動産を差し押えた場合において、差押の約三年六箇月前に右不動産の譲受人から移転登記の未経由にかかわらず該不動産がその所有に属する旨の財産申告を受け、これを前提として財産税を徴収した事実があつても、それだけでは、国は、登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有する第三者にあたらないとはいえない。

【参照・法条】
  民法177条,国税徴収法10条


国税滞納処分においては、国は、その有する租税債権につき、自ら執行機関として、強制執行の方法により、その満足を得ようとするものであつて、滞納者の財産を差し押えた国の地位は、あたかも、民事訴訟法上の強制執行における差押債権者の地位に類するものであり、租税債権がたまたま公法上のものであることは、この関係において、国が一般私法上の債権者より不利益の取扱を受ける理由となるものではない。それ故、納処分による差押の関係においても、民法一七七条の適用があるものと解するのが相当である。


▲ 上へ戻る

 都営住宅明渡し事件(公営住宅の使用関係)

◆判例 S59.12.13 第一小法廷・判決 昭和57(オ)1011 建物明渡等(民集第38巻12号1411頁)

【判示事項】
公営住宅の明渡請求と信頼関係の法理の適用

【要旨】
公営住宅の入居者が公営住宅法二二条一項所定の明渡請求事由に該当する行為をした場合であつても、賃貸人である事業主体との間の信頼関係を破壊するとは認め難い特段の事情があるときは、事業主体の長がした明渡請求は効力を生じない。

【参照・法条】
  公営住宅法22条,民法541条,民法601条


公営住宅法は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を建設し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とするものであつて・・・公営住宅の使用関係には、公の営造物の利用関係として公法的な一面があることは否定しえないところであ(る)。・・・が、他方、入居者が(右)使用許可を受けて事業主体と入居者との間に公営住宅の使用関係が設定されたのちにおいては、前示のような法及び条例による規制はあつても、事業主体と入居者との間の法律関係は、基本的には私人間の家屋賃貸借関係と異なるところはな(い)。
・・・したがつて、公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法及び借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである。


ところで、右法及び条例の規定によれば、事業主体は、公営住宅の入居者を決定するについては入居者を選択する自由を有しないものと解されるが、事業主体と入居者との間に公営住宅の使用関係が設定されたのちにおいては、両者の間には信頼関係を基礎とする法律関係が存するものというべきであるから、公営住宅の使用者が法の定める公営住宅の明渡請求事由に該当する行為をした場合であつても、賃貸人である事業主体との間の信頼関係を破壊するとは認め難い特段の事情があるときには、事業主体の長は、当該使用者に対し、その住宅の使用関係を取り消し、その明渡を請求することはできないものと解するのが相当である。


これを本件についてみるに、・・・上告人の増築した本件建物は、構造上、原状回復が容易であり、かつ、本件住宅の保存にも適しているとはいえず、また、被上告人が本件建物の増築を事後に許容したものとも認め難いところであるから、上告人の家庭に前記上告人の主張するような事情があるからといつて、被上告人との間の信頼関係を破壊するとは認め難い特段の事情があるということはできない。そうすると、被上告人の本訴明渡請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由があるものというべきである。

【解説】
本件の判決は、公営住宅の使用関係においても、民法、借地借家法、およびその契約を規律する「信頼関係の法理」の適用があることを明らかにしたものである。


▲ 上へ戻る

 公営住宅使用権の相続

◆平成2年10月18日 平成2(オ)27 建物明渡請求事件 最高裁判所第一小法廷 判決 民集第44巻7号1021頁
【判示事項】
公営住宅の入居者の死亡と相続人による公営住宅を使用する権利の承継
【裁判要旨】
公営住宅の入居者が死亡した場合に、その相続人は、当該公営住宅を使用する権利を当然に承継するものではない。
【参照法条】
公営住宅法17条,公営住宅法18条,民法896条


公営住宅法は 、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で住宅を賃貸することにより 、 国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とするものであって ( 一条) 、 そのために、 公営住宅の入居者を一定の条件を具備するものに限定し( 一七条) 、 政令の定める選考基準に従い 、 条例で定めるところにより、 公正な方法で選考して 、入居者を決定しなければならないものとした上( 一八条 ) 、 さらに入居者の収入が政令で定める基準を超えることになった場合には 、 その入居年数に応じて 、 入居者については 、当該公営住宅を明け渡すように努めなければならない旨 ( 二一条の二第一項) 、事業主体の長については 、 当該公営住宅の明渡しを請求することができる旨 ( 二一条の三第一項 )を規定しているのである 。 以上のような公営住宅法の規定の趣旨にかんがみれば 、入居者が死亡した場合には、 その相続人が公営住宅を使用する権利を当然に承継すると解する余地はないというべきである。



▲ 上へ戻る

 建築基準法65条と民法234条

◆平成01年09月19日 最第三小法廷・判決 昭和58年(オ)第1413号・建物収去等請求事件(民集43巻8号955頁)判例タイムズ710号115頁

【判示事項】 建築基準法六五条所定の建築物の建築と民法二三四条一項の適用の有無
【裁判要旨】 建築基準法六五条所定の建築物の建築には、民法二三四条一項は適用されない
【参照法条】 建築基準法65条,民法234条1項


建築基準法65条は、防火地域又は準防火地域内にある外壁が耐火構造の建築物について、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる旨規定しているが、これは、同条所定の建築物に限り、その建築については民法234条一項の規定の適用が排除される旨を定めたものと解するのが相当である。けだし、建築基準法65条は、耐火構造の外壁を設けることが防火上望ましいという見地や、防火地域又は準防火地域における土地の合理的ないし効率的な利用を図るという見地に基づき、相隣関係を規律する趣旨で、右各地域内にある建物で外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができることを規定したものと解すべきであ(る)。


▲ 上へ戻る

 食肉販売の営業許可を受けない者のした食肉買入契約の効力

◆昭和35年03月18日 昭和33(オ)61 売掛代金請求 最高裁判所第二小法廷 判決 民集第14巻4号483頁
【判示事項】
食品衛生法第二一条による食肉販売の営業許可を受けない者のした食肉買入契約の効力。
【裁判要旨】
食品衛生法第二一条による食肉販売の営業許可を受けない者のした食肉の買入契約は無効ではない。
【参照法条】
食品衛生法21条,食品衛生法施行令5条9号,民法90条


本件売買契約が食品衛生法による取締の対象に含まれるかどうかはともかくとして同法は単なる取締法規 にすぎないものと解するのが相当であるから、上告人が食肉販売業の許可を受けていないとしても、右法律 により本件取引の効力が否定される理由はない。それ故右許可の有無は本件取引の私法上の効力に消長を及ぼすものではないとした原審の判断は結局正当であり、所論は採るを得ない。


▲ 上へ戻る

 独占禁止法違反の契約の効力

◆昭和52年06月20日  昭和48(オ)1113 金銭消費貸借契約無効確認 最高裁判所第二小法廷 判決 民集第31巻4号449頁
【判事事項】
いわゆる拘束された即時両建預金を取引条件とする信用協同組合の貸付が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律一九条に違反する場合と貸付契約の私法上の効力
【裁判要旨】
いわゆる拘束された即時両建預金を取引条件とする信用協同組合の貸付が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律一九条に違反する場合でも、その違反により、貸付契約が直ちに私法上無効になるとはいえず、また、右契約が公序良俗に反するともいえないが、両建預金及び超過貸付があるために実質金利が利息制限法所定の制限利率を超過しているときは、右超過する限度で貸付契約中の利息、損害金についての約定は、同法一条、四条により無効になるものと解すべきである。

【参照法条】
私的独占の禁止及び公正取引の確保関する法律2条7項5号,私的独占の禁止及び公正取引の確保関する法律9条,昭和28年公正取引委員会告示11号10,民法90条,利息制限法1条1項,利息制限法2条,利息制限


独禁法一九条に違反した契約の私法上の効力については、その契約が公序良俗に反するとされるような場合は格別として、上告人のいうように同条が強行法規であるからとの理由で直ちに無効であると解すべきではない。けだし、独禁法は、公正かつ自由な競争経済秩序を維持していくことによつて一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とするものであり、同法二〇条は、専門的機関である公正取引委員会をして、取引行為につき同法一九条違反の事実の有無及びその違法性の程度を判定し、その違法状態の具体的かつ妥当な収拾、排除を図るに適した内容の勧告、差止命令を出すなど弾力的な措置をとらしめることによつて、同法の目的を達成することを予定しているのであるから、同法条の趣旨に鑑みると、同法一九条に違反する不公正な取引方法による行為の私法上の効力についてこれを直ちに無効とすることは同法の目的に合致するとはいい難いからである。


▲ 上へ戻る


行政行為

 国税賦課処分無効請求(行政処分の瑕疵が明白であるということの意義)

◆判例 S36.03.07 第三小法廷・判決 昭和35(オ)759 国税賦課処分無効請求(民集第15巻3号381頁)
【判示事項】
  行政処分の瑕疵が明白であるということの意義。
【要旨】
  行政処分の瑕疵が明白であるということは、処分要件の存在を肯定する処分庁の認定の誤認であることが、処分成立の当初から、外形上、客観的に明白であることをさすものと解すべきである。

【参照・法条】
   行政事件訴訟特例法1条


行政処分が当然無効であるというためには、処分に重大かつ明白な瑕疵がなければならず、ここに重大かつ明白な瑕疵というのは、「処分の要件の存在を肯定する処分庁の認定に重大・明白な瑕疵がある場合」を指すものと解すべきことは、当裁判所の判例である(昭和三二年(オ)第二五二号同三四・九・二二第三小法廷判決、集一三巻一一号一四二六頁)。右判例の趣旨からすれば、瑕疵が明白であるというのは、処分成立の当初から、誤認であることが外形上、客観的に明白である場合を指すものと解すべきである。
・・・瑕疵が明白であるかどうかは、処分の外形上、客観的に、誤認が一見看取し得るものであるかどうかにより決すべきものであつて、行政庁が怠慢により調査すべき資料を見落したかどうかは、処分に外形上客観的に明白な瑕疵があるかどうかの判定に直接関係を有するものではなく、行政庁がその怠慢により調査すべき資料を見落したかどうかにかかわらず、外形上、客観的に誤認が明白であると認められる場合には、明白な瑕疵があるというを妨げない。


【解説】
「行政処分は、たとえ違法であつても、その違法が重大かつ明白で当該処分を当然無効ならしめるものと認むべき場合を除いては、適法に取り消されない限り完全にその効力を有するものと解」いされる(判例 S30.12.26 第三小法廷・判決 昭和26(オ)898 耕作権確認並耕地引渡請求 民集第9巻14号2070頁)。これを、公定力というが、そうすると、違法(瑕疵)が重大かつ明白である場合には、公定力は認められず、無効となる(重大明白説)。無効まで至らない瑕疵の場合は、「取り消されるべき行政行為」となるが、この「取り消されるべき行政行為」と「無効の行政行為」とでは、訴訟類型(争い方・・・例えば、取消しの場合は「取消訴訟」、無効の場合には「無効確認訴訟」)や出訴期間等に違いがでてくることになる。とすれば、いかなる場合が「取消し原因」となり、また「無効原因」となるのか、特に、「無効」の判断要因である「重大かつ明白な瑕疵」とはいかなる場合を指すのかが問題となる。

この瑕疵の判定基準として「主体」「内容」「手続」「形式」の4点が着眼点とされる。無効原因につき、以下に簡単にまとめておく。

(1)主体
 無権限者のなした行為・権限外の行為
 公務員でない者がした行為(ただし、「事実上の公務員の理論」に注意。判例 S35.12.07 大法廷・判決 昭和33(オ)118 村長解職投票無効確認請求(民集第14巻13号2972頁
 心神喪失中の行為  など
(2)内容
 内容の不能・不明確
(3)手続き
 公告・通知を欠く
 立会い・協議を欠く
 聴聞を欠く
 利害関係人の保護を目的とした場合の諮問を欠く
(4)形式
 書面によるべきところを口頭でなした行為
 行政庁の署名・捺印を欠く
 理由付記を要件とする場合に理由付記を欠く


▲ 上へ戻る

 耕作権確認並耕地引渡請求(訴願裁決を裁決庁が自ら取り消した違法と取消処分の効力)

◆判例 S30.12.26 第三小法廷・判決 昭和26(オ)898 耕作権確認並耕地引渡請求(民集第9巻14号2070頁)

【判示事項】
  訴願裁決を裁決庁が自ら取り消した違法と取消処分の効力。
【要旨】
  訴願裁決庁がその裁決を自ら取り消すことが違法な場合であつても、その違法は、取消処分を当然無効ならしめるものではない。
【参照・法条】
   農地調整法の一部改正法律(昭和22法240号)附則第3条


 本件において、茨城県農地委員会は、被上告人が緑岡村農地委員会のした裁定を不服として申立てた訴願につき、昭和二四年一二月二三日附で訴願棄却の裁決をしながら、さらに被上告人の申出によつて再議の結果、昭和二六年六月二九日附をもつて先に棄却した被上告人の訴願における主張を相当と認め、前記訴願棄却の裁決を取り消した上改めて訴願の趣旨を容認するとの裁決をしたことは、原判決の確定したところである。そして、訴願裁決庁が一旦なした訴願裁決を自ら取り消すことは、原則として許されない(不可変更力・・・注)ものと解すベきであるから(昭和二六年(オ)九一五号昭和二九年一月二一日当裁判所第一小法廷判決、集八巻一号一〇二頁参照)茨城県農地委員会が被上告人の申出により原判示の事情の下に先になした裁決を取り消してさらに訴額の趣旨を容認する裁決をしたことは違法であるといわねばならない。しかしながら、行政処分は、たとえ違法であつても、その違法が重大かつ明白で当該処分を当然無効ならしめるものと認むべき場合を除いては、適法に取り消されない限り完全にその効力を有するものと解すベきところ、茨城県農地委員会のなした前記訴願裁決取消の裁決は、いまだ取り消されないことは原判決の確定するところであつて、しかもこれを当然無効のものと解することはできない。


▲ 上へ戻る

 村長解職投票無効確認事件(事実上の公務員の理論)

◆ 判例 S35.12.07 大法廷・判決 昭和33(オ)118 村長解職投票無効確認請求(民集第14巻13号2972頁)



 本訴は、a村長であつた上告人に対する解職請求について、昭和三元年一〇月二二日同村選挙管理委員会の名で行われた村長解職賛否投票の結果、過半数の同意があつたものとして村長解職の告示がなされたのに対し、上告人から、右手続を管理執行した委員会の構成が適法でないことを理由とし、右賛否投票の効力に関し、地方自治法八五条、公職選挙法二〇二条、二〇三条によつて異議訴願を経て、被上告委員会が昭和三二年一月二四日した訴願棄却の裁決の取消、ならびに前示賛否投票の無効宣言を求める訴訟である。
 しかるに、上告人が村長であつたa村は、本訴提起後の昭和三二年八月二七日、奈良県知事が関係自治団体の申請に基いて同村を奈良市に吸収合併する旨決定し、同月三〇日内閣総理大臣からその旨告示されたことは、原判決の確定するところであるから、右市町村合併は地方自治法七条七項により右告示によつて効力を生じ、a村は同日をもつて廃止されたものである。
 そして、本訴は前示委員会の裁決の取消、ならびに賛否投票の無効の宣言を求め、これによつて上告人の村長たる地位を回復することを目的とする訴訟と解すべきであるから、a村が前記のごとく廃止され、たとえ上告人が本訴において勝訴して、右賛否投票の無効が宣言されても、既にその回復すべき地位の存在しないこととなつた現在においては、かかる訴訟は訴訟の利益がなくなつたものとして許すことのできないものであることは当裁判所の判例の趣旨に徴してあきらかである。(昭和三〇年(オ)第四三〇号、同三五年三月九日言渡大法廷判決参照)

 上告人は、本訴において賛否投票の無効が宣言されるときは、右判決の効力は既往に遡及し、後任村長の関与したa村の奈良市への合併の効力にも影響を及ぼす旨主張するけれども、たとえ賛否投票の効力の無効が宣言されても、賛否投票の有効なことを前提として、それまでの間になされた後任村長の行政処分は無効となるものではないと解すべきであるから、右上告人の主張は採用することができない。


【解説】
行政行為の瑕疵は、「取消すことができる行政行為」と「無効の行政行為」とに分けることができるが、行政行為には公定力があるために瑕疵があったとしてもただちに無効とはならず法的に有効なものとして扱うのが原則である。そして、その瑕疵が重大かつ明白な場合には無効となる(重大かつ明白説)。
処分をした行政庁が当該処分につき無権限である場合には、その処分は無効である。たとえば、知事が公安委員会の権限であるデモ行進を許可したような場合があげられる。しかしながら、「無資格者が公務員に選任されて外観上公務員として行った行為は、理論上は無権限者の行為であるが、行政法秩序の安定と継続性を守るために、行政法理論はこれを有効なものとして扱ってきた」(原田「行政法要論」第4版173頁)。これを、「事実上の公務員の理論」という。上記判例は、この理論に従い、村長の解職請求が無効とされても、その賛否投票の有効なことを前提として選出された後任村長が行った行政行為は無効にならないとしたものである。


▲ 上へ戻る

 瑕疵の治癒

◆昭和36年07月14日 昭和32(オ)1096 農業用施設買収無効確認請求 最高裁判所第二小法廷 判決 民集第15巻7号1814頁
【判示事項】
農地買収計画の異議棄却決定に対する訴願の提起があるにかかわらず、その裁決を経ないで爾後の手続を進行させた瑕疵が、治療されたと認められた事例。
【裁判要旨】
農地買収計画の異議棄却決定に対する訴願の提起があるにかかわらず、その裁決を経ないで、県農地委員会が訴願棄却の裁決があることを停止条件として右買収計画を承認し、県知事が土地所有者に買収令書を発行したという瑕疵は、爾後、訴願棄却の裁決があつたことによつて治癒されたと認むべきである。
【参照法条】
行政事件訴訟特例法1条,自作農創設特別措置法7条,自作農創設特別措置法8条,自作農創設特別措置法9条


農地買収計画につき異議・訴願の提起があるにもかかわらず、これに対する決定・裁決を経ないで爾後の手続を進行させたという違法は、買収処分の無効原因となるものではなく、事後において決定・裁決があつたときは、これにより買収処分の瑕疵は治癒されるものと解するのを相当とする(昭和三四年九月二二日第三小法廷判決、民集一三巻一一号一四二六頁参照)。


▲ 上へ戻る

 違法性の承継

◆昭和25年09月15日 昭和24(オ)42 行政処分取消請求 最高裁判所第二小法廷 判決 民集第4巻9号404頁
【判示事項】
買収計画に対する不服申立の権利を失つた買収処分取消訴訟において買収計画の違法を攻撃することの当否。
【裁判要旨】
自作農創設特別措置法第五条に違反した買収計画にもとずいて買収処分が行われたときは、所有農地を買収された者は、買収計画に対する不服を申し立てる権利を失つた後も、買収処分取消の訴において買収計画の違法を攻撃することができる
【参照法条】
自作農創設特別措置法5条,自作農創設特別措置法6条1項,自作農創設特別措置法7条


ところで法第五条はその各号の一に該当する農地については買収をしないと規定しているのであるからこれに該当する農地を買収計画に入れることの違法であることは勿論これが買収処分の違法であることは言うまでもないところである。従つて右の如き違法は買収計画と買収処分に共通するものであるから買収計画に対し異議訴訟の途を開きその違法を攻撃し得るからといつて買収処分取消の訴において、その違法を攻撃し得ないと解すべきではない、法第七条が買収計画に対して異議訴訟を認めているのはただその違法の場合に行政庁に是正の機会を与え所有者の権利保護の簡便な途を開いただけであつて異議訴訟等の手続をとらなかつたからと言つて買収処分取消の訴訟においてその違法を攻撃する機会を失わせる趣旨であるとは解せられない。

買収計画に対し異議申立や訴願をせず又は訴訟裁決に対する出訴期間を徒過したときは当事者はもはや買収計画に対しその取消を請求する権利を失うのであるからその意味では確定的効力があるのであるがその確定的効力は買収計画内容に存する違法を違法なしと確定する効力があるものではない。買収の計画は買収手続の一段階をなす市町村農地委員会の処分に過ぎないので更に都道府県農地委員会の承認及び都道府県知事の買収令書の交付を経て買収手続は完結するのである。しかして買収計画の確定的効力は前記の如くその内容に存する違法を違法なしと確定する効力がないのであるから都道府県農地委員会の買収計画承認の権限は買収計画の内容の適否を審査する権限を包含するものと解すべく更に都道府県知事は買収計画又はその承認の決議に対しこれを再議に付して是正させる権限を有するのである(農地調整法第一五条ノ二八)故に都道府県農地委員会や知事が右権限の適正な行使を誤つた結果内容の違法な買収計画にもとずいて買収処分が行われたならばかかる買収処分が違法であることは言うまでもないところで当事者は買収計画に対する不服を申立てる権利を失つたとしても更に買収処分取消の訴においてその違法を攻撃し得るものといわなければならない



▲ 上へ戻る

  神戸税関懲戒処分事件

◆昭和52年12月20日 最高裁判所第三小法廷判決 ?昭和47(行ツ)52 ?行政処分無効確認等、附帯 民集31巻07号1101頁

【判示事項】
一、職員の行為が国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)九八条五項に違反する場合と同法九八条一項、一〇一条一項、人事院規則一四―一第三項違反
二、公務員に対する懲戒処分の適否に関する裁判所の審査
三、争議行為等の禁止規定違反などを理由としてされた税関職員に対する懲戒免職処分が裁量権の範囲を超えこれを濫用したものとはいえないとされた事例

【裁判要旨】
一、職員の行為が国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)九八条五項に違反する場合であつても、それが同法九八条一項、一〇一条一項、人事院規則一四―一第三項の違反となることを妨げられない。
二、裁判所が懲戒権者の裁量権の行使としてされた公務員に対する懲戒処分の適否を審査するにあたつては、懲戒権者と同一の立場に立つて懲戒処分をすべきであつたかどうか又はいかなる処分を選択すべきであつたかについて判断し、その結果と右処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、それが社会観念上著しく妥当を欠き裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法と判断すべきものである。
三、勤務時間内の職場集会、繁忙期における怠業、超過勤務の一せい拒否等の争議行為に参加しあるいはこれをあおりそそのかしたことが国家公務員法の争議行為等の禁止規定に違反するなどの理由でされた税関職員に対する懲戒免職処分は、右職場集会が公共性の極めて強い税関におけるもので職場離脱が職場全体で行われ当局の再三の警告、執務命令を無視して強行されたこと、右怠業が業務処理の妨害行為を伴いその遅延により業者に迷惑を及ぼしたこと、右超過勤務の一せい拒否が職場全体に及び業者からも抗議が出ていたこと、職員に処分の前歴があることなど判示のような事情のもとでは、社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず、懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えこれを濫用したものと判断することはできない。




公務員に対する懲戒処分は、当該公務員に職務上の義務違反、その他、単なる労使関係の見地においてではなく、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務することをその本質的な内容とする勤務関係の見地において、公務員としてふさわしくない非行がある場合に、その責任を確認し、公務員関係の秩序を維持するため、科される制裁である。
ところで、国公法は、同法所定の懲戒事由がある場合に、懲戒権者が、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をするときにいかなる処分を選択すべきかを決するについては、公正であるべきこと(七四条一項)を定め、平等取扱いの原則(二七条)及び不利益取扱いの禁止(九八条三項)に違反してはならないことを定めている以外に、具体的な基準を設けていない。したがつて、懲戒権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか、を決定することができるものと考えられるのであるが、その判断は、右のような広範な事情を総合的に考慮してされるものである以上、平素から庁内の事情に通暁し、都下職員の指揮監督の衝にあたる者の裁量に任せるのでなければ、とうてい適切な結果を期待することができないものといわなければならない。それ故、公務員につき、国公法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきである。もとより、右の裁量は、懇意にわたることを得ないものであることは当然であるが、懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである。したがつて、裁判所が右の処分の適否を審査するにあたつては、懲戒権者と同一の立場に立つて懲戒処分をすべきであつたかどうか又はいかなる処分を選択すべきであつたかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである。


▲ 上へ戻る

  国旗国歌不起立訴訟

◆平成24年1月16日 最高裁判所第一小法廷判決 平成23(行ツ)263 懲戒処分取消等請求事件

【裁判要旨】
1 公立の高等学校又は養護学校の教職員らが卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱すること又は国歌のピアノ伴奏を行うことを命ずる旨の各校長の職務命令に従わなかったことを理由とする戒告処分が,裁量権の範囲を超え又はこれを濫用するものではないとして違法とはいえないとされた事例
2 公立養護学校の教職員が卒業式において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の校長の職務命令に従わなかったことを理由とする減給処分が,裁量権の範囲を超えるものとして違法とされた事例


第1 本件の事実関係等の概要
1 本件は,東京都立高等学校又は東京都立養護学校の教職員であった教職員らが,各所属校の卒業式,入学式又は記念式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱すること又は国歌のピアノ伴奏を行うことを命ずる旨の各校長の職務命令に従わなかったところ,東京都教育委員会からそれぞれ懲戒処分(1名は減給処分,その余は戒告処分)を受けたため,上記職務命令は違憲,違法であり上記各処分は違法であるなどとして,各処分の取消し及び国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めている事案である。


・・・職務命令の憲法19条違反をいう部分について・・・原審の適法に確定した事実関係等の下において,・・・本件職務命令が憲法19条に違反するものでないことは,当裁判所大法廷判決(最高裁昭和28年(オ)第1241号同31年7月4日大法廷判決・民集10巻7号785頁,最高裁昭和44年(あ)第1501号同49年11月6日大法廷判決・刑集28巻9号393頁,最高裁昭和43年(あ)第1614号同51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号615頁,最高裁昭和44年(あ)第1275号同51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号1178頁)の趣旨に徴して明らかというべきである(起立斉唱行為に係る職務命令につき,最高裁平成22年(オ)第951号同23年6月6日第一小法廷判決・民集65巻4号1855頁,最高裁平成22年(行ツ)第54号同23年5月30日第二小法廷判決・民集65巻4号1780頁,最高裁平成22年(行ツ)第314号同23年6月14日第三小法廷判決・民集65巻4号2148頁,最高裁平成22年(行ツ)第372号同23年6月21日第三小法廷判決・裁判集民事237号53頁参照。伴奏行為に係る職務命令につき,最高裁平成16年(行ツ)第328号同19年2月27日第三小法廷判決・民集61巻1号291頁参照)。原審の判断は是認することができ,原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。


公務員に対する懲戒処分について,懲戒権者は,懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の上記行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等,諸般の事情を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを決定する裁量権を有しており,その判断は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合に,違法となるものと解される最高裁昭和47年(行ツ)第52号同52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁,最高裁昭和59年(行ツ)第46号平成2年1月18日第一小法廷判決・民集44巻1号1頁参照)。

本件において・・・みるに,不起立行為等の性質,態様は,全校の生徒等の出席する重要な学校行事である卒業式等の式典において行われた教職員による職務命令違反であり,当該行為は,その結果,影響として,学校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう作用をもたらすものであって,それにより式典に参列する生徒への影響も伴うことは否定し難い。

他方,不起立行為等の動機,原因は,当該教職員の歴史観ないし世界観等に由来する「君が代」や「日の丸」に対する否定的評価等のゆえに,本件職務命令により求められる行為と自らの歴史観ないし世界観等に由来する外部的行動とが相違することであり,個人の歴史観ないし世界観等に起因するものである。また,不起立行為等の性質,態様は,(全校の生徒等の出席する重要な学校行事である卒業式等の式典において行われた教職員による職務命令違反であり,当該行為は,その結果,影響として,学校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう作用をもたらすものであって,それにより式典に参列する生徒への影響も伴うことは否定し難い)面がある一方で,積極的な妨害等の作為ではなく,物理的に式次第の遂行を妨げるものではない。そして,不起立行為等の結果,影響も,(全校の生徒等の出席する重要な学校行事である卒業式等の式典において行われた教職員による職務命令違反であり,当該行為は,その結果,影響として,学校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう作用をもたらすものであって,それにより式典に参列する生徒への影響も伴うことは否定し難い)面がある一方で,当該行為のこのような性質,態様に鑑み,当該式典の進行に具体的にどの程度の支障や混乱をもたらしたかは客観的な評価の困難な事柄であるといえる。

・・・本件職務命令は,前記のとおり憲法19条に違反するものではなく,学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに式典の円滑な進行を図るものであって(前掲最高裁平成23年6月6日第一小法廷判決等参照),このような観点から,その遵守を確保する必要性があるものということができる。

・・・本件職務命令の違反に対し,教職員の規律違反の責任を確認してその将来を戒める処分である戒告処分をすることは,学校の規律や秩序の保持等の見地からその相当性が基礎付けられるものであって,法律上,処分それ自体によって教職員の法的地位に直接の職務上ないし給与上の不利益を及ぼすものではないことも併せ考慮すると,将来の昇給等への影響(等)・・・を勘案しても,過去の同種の行為による懲戒処分等の処分歴の有無等にかかわらず,基本的に懲戒権者の裁量権の範囲内に属する事柄ということができると解される

・・・不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについて,本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮を必要とする事情であるとはいえるものの,このことを勘案しても,本件職務命令の違反に対し懲戒処分の中で最も軽い戒告処分をすることが裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるとは解し難い。

また,本件職務命令の違反に対し1回目の違反であることに鑑みて訓告や指導等にとどめることなく戒告処分をすることに関しては,これを裁量権の範囲内における当不当の問題として論ずる余地はあり得るとしても,その一事をもって直ちに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用として違法の問題を生ずるとまではいい難い

・・・以上によれば,本件職務命令の違反を理由として,第1審原告らのうち過去に同種の行為による懲戒処分等の処分歴のない者に対し戒告処分をした都教委の判断は,社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず,上記戒告処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえないと解するのが相当である

・・・他方,・・・不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについては,本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となるものといえる。そして,減給処分は,処分それ自体によって教職員の法的地位に一定の期間における本給の一部の不支給という直接の給与上の不利益が及び,将来の昇給等にも相応の影響が及ぶ・・・等を勘案すると,上記のような考慮の下で不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えて減給の処分を選択することが許容されるのは,過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為等の前後における態度等に鑑み,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要すると解すべきである
したがって,不起立行為等に対する懲戒において減給処分を選択することについて,上記の相当性を基礎付ける具体的な事情が認められるためには,例えば過去の1回の卒業式等における不起立行為等による懲戒処分の処分歴がある場合に,これのみをもって直ちにその相当性を基礎付けるには足りず,上記の場合に比べて過去の処分歴に係る非違行為がその内容や頻度等において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものであるなど,過去の処分歴等が減給処分による不利益の内容との権衡を勘案してもなお規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものであることを要するというべきである


これを本件についてみるに,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から,なお減給処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情があったとまでは認め難いというべきであ(り)・・・処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き,上記減給処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法の評価を免れないと解するのが相当である。


▲ 上へ戻る



行政立法

 覚せい剤取締法違反被告事件(公布の時期)

◆昭和33年10月15日 最高裁判所大法廷判決 昭和30(あ)871 覚せい剤取締法違反被告事件 刑集第12巻14号3313頁
【判示事項】
官報による法令公布の時期
【裁判要旨】
法令を官報により公布する場合においては、その法令を掲載した官報が印刷局より全国の各官報販売所に発送され、これを一般希望者がいずれかの官報販売所または印刷局官報課において、閲覧しまたは購読しようとすれば、それをなし得た最初の時点までにはおそくとも、公布されたものと解すべきである。
【参照法条】
憲法7条1号,憲法39条,法例1条

成文の法令が一般的に国民に対し、現実にその拘束力を発動する(施行せられる)ためには、その法令の内容が一般国民の知りうべき状態に置かれることを前提要件とするものであること、またわが国においては、明治初年以来、法令の内容を一般国民の知りうべき状態に置く方法として法令公布の制度を採用し、これを法令施行の前提要件とし、そしてその公布の方法は、多年官報によることに定められて来たが、公式令廃止後も、原則としては官報によつてなされるものと解するを相当とすることは、当裁判所の判例とするところである。
 ところで官報による法令の公布は、一連の手続、順序を経てなされるものであるが・・・官報が全国の各官報販売所に到達する時点、販売所から直接に又は取次店を経て間接に購読予約者に配送される時点及び官報販売所又は印刷局官報課で、一般の希望者に官報を閲覧せしめ又は一部売する時点はそれぞれ異つていたが、当時一般の希望者が右官報を閲覧し又は購入しようとすればそれをなし得た最初の場所は、印刷局官報課又は東京都官報販売所であり、その最初の時点は、右二ケ所とも同日午前八時三〇分であつたことが明らかである。・・・事実関係の下においては、本件改正法律は、おそくとも、同日午前八時三〇分までには、前記大法廷判決にいわゆる「一般国民の知り得べき状態に置かれ」たもの、すなわち公布されたものと解すべきである。そして「この法律は、公布の日より施行する」との附則の置かれた本件改正法律は、右公布と同時に施行されるに至つたものと解さなければならない。
しかるに原審の確定したところによれば、本件犯行は、同日午前九時頃になされたものであるというのであるから、本件改正法律が公布せられ、施行せられるに至つた後の犯行であることは明瞭であつて、これに本件改正法律が適用せられることは当然のことといわねばならない。


▲ 上へ戻る

 サーベル事件(銃砲刀剣類登録規則の法適合性)

◆平成2年2月1日 最高裁判所第一小法廷判決 昭和63(行ツ)163 刀剣登録拒否処分取消 民集第44巻2号369頁
【判示事項】
銃砲刀剣類登録規則四条二項の法適合性
【裁判要旨】
銃砲刀剣類登録規則四条二項が、銃砲刀剣類所持等取締法一四条一項の登録の対象となる刀剣類の鑑定基準として、美術品として文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定めていることは、同条五項の委任の趣旨を逸脱するものではない。
【参照法条】
銃砲刀剣類所持等取締法14条,銃砲刀剣類登録規則4条2項


どのような刀剣類を我が国において文化財的価値を有するものとして登録の対象とするのが相当であるかの判断には、専門技術的な検討を必要とすることから、登録に際しては、専門的知識経験を有する登録審査委員の鑑定に基づくことを要するものとするとともに、その鑑定の基準を設定すること自体も専門技術的な領域に属するものとしてこれを規則に委任したものというべきであり、したがって、規則においていかなる鑑定の基準を定めるかについては、法の委任の趣旨を逸脱しない範囲内において、所管行政庁に専門技術的な観点からの一定の裁量権が認められているものと解するのが相当である。
 そして、規則に定められた刀剣類の鑑定の基準をみるに・・・これによると、法一四条一項の文言上は外国刀剣を除外してはいないものの、右鑑定の基準としては、日本刀であって、美術品として文化財的価値を有するものに限る旨の要件が定められていることが明らかである。
 そこで、右の要件が法の委任の趣旨を逸脱したものであるか否かをみるに、刀剣類の文化財的価値に着目してその登録の途を開いている前記法の趣旨を勘案すると、いかなる刀剣類が美術品として価値があり、その登録を認めるべきかを決する場合にも、その刀剣類が我が国において有する文化財的価値に対する考慮を欠かすことはできないものというべきである。
・・・日本刀は・・・我が国独自の製作方法と様式美を持った刀剣であるが・・・古くから我が国において美術品としての鑑賞の対象とされてきた、というのであり、これらの認定事実に照らすと、規則が文化財的価値のある刀剣類の鑑定基準として、前記のとおり美術品として文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定め、この基準に合致するもののみを我が国において前記の価値を有するものとして登録の対象にすべきものとしたことは、法一四条一項の趣旨に沿う合理性を有する鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を逸脱する無効のものということはできない。そうすると、上告人の登録申請に係る本件サーベル二本は上告人がスペインで購入して日本に持ち帰った外国刀剣であって、規則四条二項所定の鑑定の基準に照らして、登録の対象となる刀剣類に該当しないことが明らかであるから、以上と同旨の見解に立って、上告人の右登録申請を拒否した被上告人の本件処分に違法はないとした原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。


▲ 上へ戻る

 監獄法事件

◆平成3年7月9日 最高裁判所第三小法廷判決 昭和63(行ツ)41 面会不許可処分取消等 民集第45巻6号1049頁
【判示事項】
一 監獄法施行規則(平成三年法務省令第二二号による改正前のもの)一二〇条及び一二四条の各規定の法適合性
二 拘置所長が未決勾留により拘禁された者と一四歳未満の者との接見を許さなかつたことにつき国家賠償法一条一項にいう過失がないとされた事例
【裁判要旨】
一 監獄法施行規則(平成三年法務省令第二二号による改正前のもの)一二〇条及び一二四条の各規定は、未決勾留により拘禁された者と一四歳未満の者との接見を許さないとする限度において、監獄法五〇条の委任の範囲を超え、無効である。
二 拘置所長が監獄法四五条に違反して未決勾留により拘禁された者と一四歳未満の者との接見を許さない旨の処分をした場合において、右処分は監獄法施行規則(平成三年法務省令第二二号による改正前のもの)一二〇条に従つてされたものであり、かつ、右規則一二〇条及びその例外を定める一二四条は明治四一年に公布されて以来長きにわたつて施行され、その間これらの規定の有効性に実務上特に疑いを差し挟む解釈がされなかつたなど判示の事情があるときは、拘置所長が右処分をしたことにつき国家賠償法一条一項にいう過失があつたということはできない。

【参照法条】
監獄法45条,監獄法50条,監獄法施行規則(平成3年法務省令第22号による改正前のもの)120条,監獄法施行規則(平成3年法務省令第22号による改正前のもの)124条,国家賠償法1条1項

未決勾留は、刑事訴訟法の規定に基づき、逃亡又は罪証隠滅の防止を目的として、被疑者又は被告人の居住を監獄内に限定するものである。そして、未決勾留により拘禁された者(以下「被勾留者」という。)は、(ア) 逃亡又は罪証隠滅の防止という未決勾留の目的のために必要かつ合理的な範囲において身体の自由及びそれ以外の行為の自由に制限を受け、また、(イ) 監獄内の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性が認められる場合には、右の障害発生の防止のために必要な限度で身体の自由及びそれ以外の行為の自由に合理的な制限を受けるが、他方、(ウ) 当該拘禁関係に伴う制約の範囲外においては、原則として一般市民としての自由を保障される(最高裁昭和四〇年(オ)第一四二五号同四五年九月一六日大法廷判決・民集二四巻一〇号一四一〇頁同昭和五二年(オ)第九二七号同五八年六月二二日大法廷判決・民集三七巻五号七九三頁参照)。
 ・・・被勾留者には一般市民としての自由が保障されるので、法四五条は、被勾留者と外部の者との接見は原則としてこれを許すものとし、例外的に、これを許すと支障を来す場合があることを考慮して、(ア) 逃亡又は罪証隠滅のおそれが生ずる場合にはこれを防止するために必要かつ合理的な範囲において右の接見に制限を加えることができ、また、(イ) これを許すと監獄内の規律又は秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性が認められる場合には、右の障害発生の防止のために必要な限度で右の接見に合理的な制限を加えることができ、としているにすぎないと解される。この理は、被勾留者との接見を求める者が幼年者であっても異なるところはない。
 これを受けて、法五〇条は、「接見ノ立会:::其他接見‥‥‥ニ関スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム」と規定し、命令(法務省令)をもって、面会の立会、場所、時間、回数等、面会の態様についてのみ必要な制限をすることができる旨を定めているが、もとより命令によって右の許可基準そのものを変更することは許されないのである。
 ところが、規則一二〇条は、規則一二一条ないし一二八条の接見の態様に関する規定と異なり、「十四歳末満ノ者ニハ在監者ト接見ヲ為スコトヲ許サス」と規定し、規則一二四条は「所長ニ於テ処遇上其他必要アリト認ムルトキハ前四条ノ制限ニ依ラサルコトヲ得」と規定している。右によれば、規則一二〇条が原則として被勾留者と幼年者との接見を許さないこととする一方で、規則一二四条がその例外として限られた場合に監獄の長の裁量によりこれを許すこととしていることが明らかである。しかし、これらの規定は、たとえ事物を弁別する能力の夫発達な幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、それ自体、法律によらないで、被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、法五〇条の委任の範囲を超えるものといわなければならない。
・・・被勾留者も当該拘禁関係に伴う一定の制約の範囲外においては原則として一般市民としての自由を保障されるのであり・・・そうすると、規則一二〇条(及び一二四条)は、原審のような限定的な解釈を施したとしても、なお法の容認する接見の自由を制限するものとして、法五〇条の委任の範囲を超えた無効のものというほかはない。

以上によって本件をみるのに、・・・所長は、法四五条の趣旨に従い、被上告人とCとの接見を許可すべきであったといわなければならない。ところが、所長は、本件処分をし、これを許可しなかったのであるから、本件処分は法四五条に反する違法なものといわなければならない。

そこで、進んで、国家賠償法一条一頃にいう「過失」の有無につき検討を加える。
・・・規則一二〇条(及び一二四条)は明治四一年に公布されて以来長きにわたって施行されてきたものであって、本件処分当時までの間これらの規定の有効性につき、実務上特に疑いを差し挟む解釈をされたことも裁判上とりたてて問題とされたこともなく、裁判上これが特に論議された本件においても第一、二審がその有効性を肯定していることはさきにみたとおりである。そうだとすると、規則一二〇条(及び一二四条)が右の限度において法五〇条の委任の範囲を超えることが当該法令の執行者にとって容易に理解可能であったということはできないのであって、このことは国家公務員として法令に従ってその職務を遂行すべき義務を負う監獄の長にとっても同様であり、監獄の長が本件処分当時右のようなことを予見し、又は予見すべきであったということはできない。(ので)所長が右の接見を許可しなかったことにつき国家賠償法一条一項にいう「過失」があったということはできない。


▲ 上へ戻る

 パチンコ球遊器事件(通達による課税処分の解釈変更)

◆昭和33年3月28日 最高裁判所第二小法廷判決 昭和30(オ)862 物品税課税無効確認並びに納税金返還請求 民集第12巻4号624頁
【判示事項】
パチンコ球遊器は、物品税法第一条にいう遊戯具にあたるか。
【裁判要旨】
パチンコ球遊器は、物品税法第一条にいう遊戯具にあたる。
【参照法条】
物品税法1条

物品税は物品税法が施行された当初(昭和四年四月一日)においては消費税として出発したものであるが、その後次第に生活必需品その他いわゆる資本的消費財も課税品目中に加えられ、現在の物品税法(昭和一五年法律第四〇号)が制定された当時、すでに、一部生活必需品(たとえば燐寸)(第一条第三種一)や「撞球台」(第一条第二種甲類一一)「乗用自動車」(第一条第二種甲類一四)等の資本財もしくは資本財たり得べきものも課税品目として掲げられ、その後の改正においてさらにこの種の品目が数多く追加されたこと、いわゆる消費的消費財と生産的消費財との区別はもともと相対的なものであつて、パチンコ球遊器も自家用消費財としての性格をまつたく持つていないとはいい得ないこと、その他第一、二審判決の掲げるような理由にかんがみれば、社会観念上普通に遊戯具とされているパチンコ球遊器が物品税法上の「遊戯具」のうちに含まれないと解することは困難であり、原判決も、もとより、所論のように、単に立法論としてパチンコ球遊器を課税品目に加えることの妥当性を論じたものではなく、現行法の解釈として「遊戯具」中にパチンコ球遊器が含まれるとしたものであつて、右判断は、正当である。
なお、論旨は、通達課税による憲法違反を云為しているが、本件の課税がたまたま所論通達を機縁として行われたものであつても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、本件課税処分は法の根拠に基く処分と解するに妨げがなく、所論違憲の主張は、通達の内容が法の定めに合致しないことを前提とするものであつて、採用し得ない
 従つて、本件賦課処分を当然無効であると断ずることはできないとした第一審判決を支持した原判決は正当であつて論旨は理由がない。


▲ 上へ戻る

 通達の法的性質

◆昭和43年12月24日 昭和39(行ツ)87 法律解釈指定通達取消請求 最高裁判所第三小法廷 判決 民集第22巻13号3147頁
【判示事項】
通達の取消の訴が許されないとされた事例
【裁判要旨】
昭和三五年三月八日付衛環発第八号都道府県等衛生主管部局長あて厚生省公衆衛生局環境衛生部長通知は、宗教団体の経営する墓地の管理者は埋葬等を請求する者が他の宗教団体の信者であることのみを理由としてその請求を拒むことはできないからこの趣旨にそつて事務処理をすべき旨を求めた行政組織内部における命令にすぎず、従来の法律の解釈、事務の取扱を変更するものではあるが、墓地の管理者らにあらたに埋葬の受忍義務を課する等これらの者の権利義務に直接具体的な法律上の影響を及ぼすものではなく、墓地の経営者からその取消を求める訴を提起することは許されない。
【参照法条】 行政事件訴訟法3条2項,墓地、埋葬等に関する法律13条,墓地、埋葬等に関する法律21条


論旨は、要するに、本件通達は従来慣習法上認められていた異宗派を理由とする埋葬拒否権の内容を変更し、新たに上告人に対して一般第三者の埋葬請求を受忍すべき義務を負わせたものであつて、この通達によれば、爾後このような理由による拒否に対しては刑罰を科せられるおそれがあり、また、右通達が発せられてからは現に多くの損害、不利益を被つている、従つて、右通達は上告人ら国民をも拘束し、直接具体的に上告人らに法律上の効果を及ぼしているのであつて、原判決が上告人のこのような主張を排斥して本訴を許すべからざるものとしたのは、本件通達の内容、効果を誤認し、ひいて法律の適用を誤つたものであり、また、審理不尽の違法を犯している、というのである。

元来、通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであり、このような通達は右機関および職員に対する行政組織内部における命令にすぎないから、これらのものがその通達に拘束されることはあつても、一般の国民は直接これに拘束されるものではなく、このことは、通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合においても別段異なるところはない。このように、通達は、元来、法規の性質をもつものではないから、行政機関が通達の趣旨に反する処分をした場合においても、そのことを理由として、その処分の効力が左右されるものではない。また、裁判所がこれらの通達に拘束されることのないことはもちろんで、裁判所は、法令の解釈適用にあたつては、通達に示された法令の解釈とは異なる独自の解釈をすることができ、通達に定める取扱いが法の趣旨に反するときは独自にその違法を判定することもできる筋合である。
そして、現行法上行政訴訟において取消の訴の対象となりうるものは、国民の権利義務、法律上の地位に直接具体的に法律上の影響を及ぼすような行政処分等でなければならないのであるから、本件通達中所論の趣旨部分の取消を求める本件訴は許されないものとして却下すべきものである。


▲ 上へ戻る